理事長 小貫 満義

 先代の理事長小貫定雄により設立されました、私ども財団法人小貫基金はお蔭さまで35周年を迎えることになりました。これもひとえに、奨学育英事業の発足と発展にかかわってこられました諸先輩の方々をはじめ、関係者皆様の並々ならぬご尽力とご支援のお蔭と心から感謝申し上げます。

 "資源の乏しいわが国においては、人的資源こそ国の宝。向学心に燃え、豊かな人間性と資質に富んだ若人諸君に何かしらの支援をすることにより将来を担う人材育成につながれば“ という思いのもとに小貫基金は設立されました。

  先代理事長の自らの学生時代の経緯からおよそ50年程前に、経済的に苦労している学生のためにと寄宿舎を設けた、言わばボランティア活動の一環が前身でありました。その後、都市開発計画と相まって立ち退きを余儀なくされました。しかし、長年培われたその精神は受け継がれ、奨学育英事業にその様を変え財団法人小貫基金として現在に至っております。

  設立当初は県内の高校に限りましたが、現在は大学、専門学校、留学生に、また、医療系の大学や研究機関の助成、教育助成にとその範囲枠を広めております。 関わりました奨学生も今や500名以上に達し、医学、教育、行政、IT産業などの多くの分野で、優秀な人材として活躍されています。 これはまさに、財団の誇りであり設立の志しが実を結んだ一つの姿と財団一同喜びに堪えません。

 経済的理由から修学困難な優秀な学生に学資貸与等の目的で1943年に設立された旧日本育英会の奨学金制度は、2004年に文科省所轄の独立法人日本学生支援機構に継承されましたが、その時代は大半が貧しい経済状態の中で大学の数も進学率も少なく、就職も容易で働いて充分に貸与奨学金の返還ができた時代でした。 しかし、昨今は2人に1人が何らかのかたちで奨学金を受けて学生生活を送っており、右肩下がりの景気動向の中、奨学金返済という借金を背負ったまま、言わば学資ローンを抱えての負の旅立ちとなり大きな社会問題になっております。国もこの点に留意し経済格差解消のため、返済なしの給付型奨学金の創設を掲げており、その拡大に多くの期待をよせるところであります。

 そのような背景のもと、私ども小貫基金は今後とも設立理念を忘れず、将来を託す若い力が人材=人財となるよう、そのニーズに応えるべく、微力ではありますが事業環境に充実に努めてまいります。 今後とも、関係各位皆様の更なるご尽力とご理解ご協力を賜ります様お願い申し上げ、小貫基金創立35周年記念のご挨拶とさせていただきます。

平成29年 秋季